2013/08/17

夏季特別イベント用 怖くない話9

棘陽生まれの文官のトウ艾が昇進が決まり、許昌に一人暮らしする事になりました。
とあるマンションに引っ越したその日、部屋に小さな穴があいていて、向こう側が真っ赤なのに気づきました。

トウ艾は、すぐに大家に連絡して埋めて貰う約束をしました。工事は来週なので、それまで棚を置いて塞いでおく事にしました。

すると、隣の部屋から恐ろしく低い声が聞こえてきました。

「ナンデ…ナンデカクシタ…!!!」
「穴が開いていてはお互いのプライバシーの侵害になります」
「エッ」
「大家に連絡したのでご安心下さい。ところで先ほど蕎麦の出前を頼みましたので、届き次第、持ってご挨拶に参りたいのですが、ご都合宜しいでしょうか」
「チョッ、マッ、空気ヨメ!!」

怒鳴り声と共に棚が倒され、穴からもやもやとした煙が這い出てきました。それは徐々に女の形になっていきます。目から真っ赤な血が滴っています。

「コロシテヤル…!!」
「なんと、人ではなかったのか…」
「ヨシ、ヨウヤク怯エテ…」
「ゲキハダーッ!!!」
「!!?」

トウ艾は叫びながら光線を放ちました。それは赤い目の女に命中し、下半身を消滅させます。

「ウガァァ!!!」
「むっ、撃破出来なかったか…」
「ウ、ヒ、怯ンデル?コレ反撃ノチャンス?」

「助太刀するぜ!!!」

力強く扉を開けたのは已吾生まれで霊感が強いTさんでした!

「デリーーッッ!!!!」
「ウギャァァアアアアア!!!」

Tさんの頭の輝きに、赤い目の女は完全に消滅しました。

「かたじけない。自分の力では撃破に至りませんでした」
「いやあ、なんの。おめェは若いなりによく出来てるって。わしもプカプカしてられねェな」
「有難いお言葉です。しかしT殿、どうしてここに?」
「ざるそば4つ、お待たせしやしたー」
「なんと」


已吾生まれと棘陽生まれは凄い、改めてそう思いました。

夏季特別イベント用 怖くない話8

事件に関する重要な記録をここに公開する。

ICレコーダーによる記録である。
吹き込まれた声は基本的に一言を除いて王異(おうい)のものだけである。
彼女は華北警察の刑事であると共に、ENJYOU社航空機墜落事故の唯一の生存者である曹操(そうそう)さんじゅうななさいの知り合いでもある。
曹操さんじゅうななさいは事故の怪我によって、長らく植物人間状態と見なされていたが、先日、意識をはっきりと回復していることが確認された。
会話が出来るほどには回復していないため、奥歯に電極を取り付け、歯を噛み合わせると電子音が鳴る仕組みでコミュニケーションを可能にした。
イエスの場合は二回、ノーの場合は一回、歯を噛み合わせてもらった。

曹操さんじゅうななさいはまだ視力が回復していなかったが、気配から不安になる事を避けるため、部屋には王異と曹操さんじゅうななさいの二人だけである。
カメラなども設置していない。
以下が記録である。

「他の乗客の人たちは普通でしたか?」
 二回。
「飛んでいる最中に何かが起こったのですね」
 四回、間断なく。
「それはYESということ?」
 三回。
「つらい? この話、やめましょうか?」
 しばし後、一回。
「続けられる?」
 二回。
「じゃあ、もう少し頑張ってくださいね」
 二回。
「事故の前、飛行機は揺れましたか?」
 二回。
「恐かった?」
 やや後、一回。
「その時には、もう落ちると思いましたか?」
 一回。
「大したことはないと思ったんですね」
 二回。
「指パッチン?」
 二回。
「そいつは指パッチンで格好つけながら入ってきたということ?」
 二回。
「そいつは、乗客に酷いことをしたのですか?」
 二回。
「あなたの傷も、そいつのせい?」
 何度も。
「背が低かった?」
 何度も。
「紫のターバンをしていた?」
 何度も。
「妙な笑い方だった?」
 何度も。
「鎖鎌を持っていた?」
 何度も。
「弓兵隊を連れていた?」
 何度も。
「火矢を撃とうと」
「デリーーーッ!!!」

 電子音は以後、暫く鳴らなくなる。
 代わりにこの世のものとは思えない多くの断末魔が響く。

「…スキンヘッドの大男が、あなたを護ってくれた?」
 何度も、何度も。
「已吾生まれって凄いのね。改めて思ったわ」

夏季特別イベント用 怖くない話7

曹操殿が、シャム猫が1匹飼っていた。
元々は曹操殿の前妻が飼ってた猫だったが、前妻と別れる際、
「あなたと息子の事を思い出して辛い」と押しつけられたらしい。

曹操殿の元で働き始めて半年ぐらい経った頃、世話係りが休んだので、
シャムを丞相府に連れてきて曹操殿が仕事の合間に世話をしていた。
そろそろ食事の時間、という時に来客があったので、
たまたま一緒だった俺が代わりに餌をやる事になってしまった。
まあ、別れたのは俺のせいでもあるから、仕方なかったのだけれども…

「ほら、餌だよ」と俺が言った瞬間、猫缶を持つ俺の手に激痛!
シャムが突然、噛みついてきた。
甘噛みではない、本気で肉を食い千切るような噛み方だ!
っつーか、肉が一部裂けた! ピュゥッて血が吹き出てるし!?
「うあっ!」と声を上げた瞬間、またも激痛!
腕に牙を立てながら、思いっきり爪を立てている!
俺は思い切り腕を振り上げてシャムを投げた。

しかし、シャムは身を翻して再び立って襲う構えを見せる。
「シャアアアあああああああああああーーーーーーーー!」
シャムの鳴き声が徐々に変化してきた。まるで、人間の泣き声だ!
よく見るとシャムの影が大きくなり、人の形になってきていた。
そして、下顎が外れそうなくらいに口をあけ、何かに狙いをさだめた様だ。
おそらくは俺の首筋・・・逃げなきゃ!しかし体が動かない!!

「そこまでだ!」
聞いたことのある声。已吾生まれで霊感の強いTさんだ!
Tさんは俺とシャムの間に立つと、あるものを振り回した…

”ねこじゃらし”だ!

シャムがねこじゃらしに飛び掛った瞬間、Tさんが「デリーだニャー!!」と叫んだ。
するとねこじゃらしが光り、シャムの影を引き裂いてゆく!

ついにシャムの影はもとの猫の影となった。
その瞬間シャムの首輪がパァンと弾けた。
「ねこちゃんを利用するなんて許せないぜ!」
シャムは人?が変わった様に大人しくなっていた。

「典韋殿、この話IFルートだったっけ?」
「お、御大将とねこちゃんが心配だったんだ!賈クなんてどーでも良かったんだからな!!」
Tさんは華佗膏を押し付けて走り去って行った。
已吾生まれのツンデレは凄い、俺は華佗膏を塗りながら改めてそう思った。